2001年4月28日

第1回 春の勉強会 2001年4月28日開催

日時:2001年4月28 日(土)13:30~17:30 
場所:龍谷大学瀬田学舎龍谷エクステンションセンター(REC)(滋賀県大津市)


テーマ:アフリカの雑穀をめぐって

1)
「西アフリカのトウジンビエ栽培と脱粒型トウジンビエ」  三浦励一(京都大学大学院農学研究科)
 トウジンビエはアフリカとインドの夏雨型半乾燥地で、ソルガム とならぶ主要穀物となっている。その起源地と推定されている西アフリカでは、トウジンビエ の畑の中に、雑草型ともいわれる脱粒性トウジンビエがごく普通に混在している。この脱粒型は、あるときは除草され、あるときは収穫して食用とされ、作物と 雑草のあいまいな境界をなしている。
 これまでの観察と実験の結果からは、脱粒型トウジンビエの大部分は、播きつけた非脱粒型の種子から生じているらしい。トウジンビエは雌性先熟による他殖 性の植物であるため、脱粒型の花粉によって種穂が汚染されるのである。花粉を通じて継代しているらしいこの脱粒型は、おもしろいことに、「男トウジンビ エ」を意味する地方名で呼ばれている。しかし、脱粒型が集団の中に維持される遺伝的機構には、まだわからないことが多い。
 トウジンビエの栽培法の地理的変異や利用法についてもあわせて紹介する。

2)「エチオピアの森林焼畑農耕にみる環境・技術・社会」  佐藤廉也(九州大学大学院比較社会文化研究院)

 エチオピア南西部の熱帯林に住むマジャンギル人は、その豊かな森林資源を利用して、焼畑 農耕、蜂蜜採集、狩猟などの生業を行う。彼らの伝統的な生業形態 は、数年ごとに耕地を、また十数年から数十年ごとに集落を移動させることによって森林を循環的に利用するものである。ここでは、農耕技術を具体的にみると ともに、今世紀前半から現在に至る集落移動史を追うことによって、森林農耕における環境、人口、技術、社会構造の関連性と意味について考えてみたい。
 マジャンギルの農耕は、モロコシ、トウモロコシ、ヤム、タロ、サツマイモ、 キャッサバなど多種多様な作物の組み合わせ、休閑と伐採のローテーション、そ して季節的に異なるタイプの播種・伐採技術を用いることによって成り立っている。これらは全体として、生産の強化や人口の集中を抑制し、労働生産性を高め るとともに森林資源の持続的な利用を可能にするシステムであったと演者は考えている。それを検証するために、長期の集落動態や近年の社会状況の変化への対 応を具体的にみていきたい。