2011年6月26日

第11回 春の勉強会 (2011年6月26日開催)

<テーマ>デンプン利用の考古学と民族誌

1.日本の考古学研究における残存デンプン粒分析の現状と課題
                  渋谷 綾子(広島大学総合博物館)
2.ワラビ粉利用の歴史民族誌:日本とニュージーランドの比較
               ピーター・マシウス(国立民族学博物館)

 デンプンを手がかりに人類の過去の食生活を探る試みとして、考古学、および比較歴史民族誌から話題を提供していただいた。
 遺跡土壌中や、出土遺物に付着したデンプン粒の分析は、近年、急速に発達した分野であり、渋谷氏は、日本における先駆的な研究者の一人である。雑穀研究会では、過去の勉強会でも考古学における雑穀を取り上げ、灰像法やレプリカ法といった分析技術とその雑穀への応用例について報告していただいたことがある。今後、デンプン分析という手法も、雑穀の考古学的な研究の有力な手がかりとなることが期待される。
 マシウス氏は、ワラビの地下茎の貯蔵デンプンの利用に着目し、日本の民俗事例とニュージーランドの先住民族マオリの民族誌における記述を比較、いずれの地でも過去にワラビが主要なデンプン源であった可能性を指摘した。マオリはイモ類を栽培する農耕民であったが、ニュージーランドに広く自生するワラビの地下茎も重要な食料源としていた。19世紀の民族誌によると、マオリは掘り出した地下茎を低温の火で炙り、叩いて割り、歯で噛みしごくようにしてデンプンを食べていた。日本でもワラビ粉は広く採集、利用されてきたが、その利用の始まりはおそらく農耕以前にさかのぼるであろう。縄文時代のデンプン源としては、堅果類があったことが考古学的にわかっているが、ワラビもまた重要なデンプン源であった可能性が考えられる。
 両講演に関して、参加者により質疑応答が行われた。現在、日本ではワラビはデンプン源としてよりも山菜として利用されているが、山菜として栽培されている事例が紹介された。また、岐阜県高山市にワラビ粉採取に関連した道具と小屋が保存されているという情報も提供された。

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